管理番号:10045020262039

府省:厚生労働省

提供状況

2026-08-24 調査票情報の提供を受けた者の氏名又は名称 内藤朋枝
調査票情報の提供を受けた者(個人に限る。)の職業、所属その他の当該者に関する事項 成蹊大学経済学部准教授
提供した調査票情報に係る統計調査の名称 国民生活基礎調査
調査票情報の利用目的 本研究課題「子どもの生活環境の変化と母親のワーク・ライフ・バランス」は、家庭内環境の変化が母親の就業行動や生活時間配分にどのような影響を与え、それが子どもの生活環境やウェルビーイングにどのように波及するのかを明らかにすることを目的としている。 研究開始当初は、主として子どもの成長に伴う育児負担の変化と母親の就業継続との関係のみに着目していた。しかし研究を進める過程で、子育て世帯を取り巻く家庭内ケア環境は育児のみで構成されるものではなく、高齢化の進展によって介護負担が重要な制約要因となっていることが明らかとなった。特に子どもの成長にともない母親の介護負担が深刻化し、ダブルケアの問題に直面することも研究の過程で明らかになった。 日本では少子高齢化の進展に伴い、子育て期にある世代が高齢の親の介護責任を担うケースが増加している。特に近年は、育児と介護を同時に担う「ダブルケア」が重要な社会問題として認識されている。子育て世帯において介護負担が発生した場合、家族構成員の時間配分や就業行動は大きく変化する可能性がある。介護のための時間投入は市場労働や育児に利用可能な時間を減少させ、就業継続や労働時間の選択にも影響を及ぼし得る。また、介護に伴う精神的負担は家庭環境全体に波及し、親子関係や子どもの生活環境にも影響する可能性がある。本研究の理論的基盤である家計の時間配分モデルでは、家計は限られた時間資源を市場労働、育児・家事・介護、余暇などへ配分すると考える。したがって母親のワーク・ライフ・バランスを分析するためには、育児負担のみならず介護負担を含めた家庭内ケア責任全体を把握する必要がある。介護負担を考慮しない分析では、特に子どもが小学校、中学校と成長する中で、母親の時間制約や就業行動を十分に説明できない可能性がある。 こうした問題意識から、本研究では家庭内ケア負担の重要な構成要素として介護に着目するに至った。これは当初の研究課題を変更するものではなく、研究遂行過程において明らかとなった重要な説明要因を追加的に分析する発展的研究として位置づけられる。実際、母親のワーク・ライフ・バランスに関する近年の研究では、育児のみならず介護を含めたケア責任全体を分析対象とする必要性が指摘されている。介護テクノロジーは、この家庭内ケア負担を軽減する可能性を有する重要な政策手段である。見守り機器やリフティング補助機器、ICTを活用した介護支援システム等は、介護に必要な時間や身体的負担を軽減し、介護者(特に母親)の就業継続や生活の質の向上を支援することが期待されている。介護テクノロジーが実際に介護者の負担軽減につながるのであれば、その効果は介護者本人にとどまらず、家庭内の時間資源や人的資源の再配分を通じて子どもの生活環境にも波及する可能性がある。 本研究課題の中心的関心は、子どもの家庭内環境の変化が母親のワーク・ライフ・バランスに与える影響を明らかにすることである。介護テクノロジーの導入や利用実態を分析することは、家庭内ケア負担がどのように軽減されるのか、その結果として母親の就業継続や時間配分がどのように変化するのかを理解するために不可欠である。そのため、本研究において介護テクノロジー利用の調査データを、国民生活基礎調査を利用してより代表性の高いデータに補正することは、家庭内ケア負担の軽減メカニズムをより正確に把握し、母親のワーク・ライフ・バランスおよび子どもの生活環境との関連を検証することにある。 以上のように、介護テクノロジーに関する分析は、本科研課題の対象である家庭内ケア環境の変化を包括的に理解するために必要な研究であり、母親のワーク・ライフ・バランスおよび子どもの生活環境の決定要因を解明するという当初研究目的と整合的なものである。当該データは、この研究目的を達成するために必要不可欠な情報を提供するものであり、本研究課題の遂行に資するものであると考える。
この度申請をお願いする国民生活基礎調査は、全国の世帯及び世帯員を対象として実施される我が国を代表する基幹統計調査であり、介護の有無、健康状態、世帯構成、所得、就業状況等に関する豊富な情報を含んでいる。 今回の研究では、国民生活基礎調査の調査票情報を利用し、介護を受けている高齢者及び介護を受けていない高齢者の属性分布を把握するとともに、介護テクノロジー利用調査の回答者属性と比較することで、得られた標本の代表性を検証する。さらに、仮に調査対象者に偏りが認められた場合には、どのような属性の者が過大あるいは過小に含まれているかを把握し、分析結果の解釈及び統計的補正の基礎資料として活用する。これにより、今回の研究で得られる知見の外的妥当性を高め、介護テクノロジーに関する政策的示唆の信頼性向上に資することを目的とする。
備考