管理番号:10050020210001
府省:農林水産省
提供状況
2021-07-21 | 調査票情報の提供を受けた者の氏名又は名称 |
阿久根 優子 |
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調査票情報の提供を受けた者(個人に限る。)の職業、所属その他の当該者に関する事項 |
日本大学生物資源科学部准教授 |
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提供した調査票情報に係る統計調査の名称 |
農業経営統計調査 |
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調査票情報の利用目的 | 科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)の補助金を受け、テーマ「動学的応用一般均衡モデルを用いた高温耐性品種米普及による地域経済への評価分析」の研究の一環として、個々の農家の生産性への影響要因(生産者固有の特徴)を明らかにするため。 | |
備考 |
統計若しくは統計的研究の成果又はその概要等
調査票情報の提供を受けた者の氏名又は名称 |
阿久根 優子 |
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提供した調査票情報に係る統計調査の名称 |
農業経営統計調査 |
統計又は統計的研究の成果等のタイトル等 | 文部科学省科学研究費助成事業「動学的応用一般均衡モデルを用いた高温耐性品種米普及による地域経済への評価分析」 |
提出された統計若しくは統計的研究の成果又はその概要 |
[a] 学術雑誌に掲載された成果の概要は次のとおり。 Yuko Akune and Nobuhiro Hosoe, “Microdata analysis of Japanese farmers’ productivity: Estimating farm heterogeneity and elasticity of substitution among varieties,” Agricultural Economics, 52(4), 633–644. https://doi.org/10.1111/agec.12639 【概要】 本研究では、『農業経営統計調査』の個票データを用いて、生産性の観点からみた農家の異質性と製品差別化の程度を定量的に明らかにした。具体的には、生産関数の推定を経て得た全要素生産性(total factor productivity, TFP)の分布の形状について分析を行った。明らかになった点は次の3 つである。第1 に、生産性の低い部分に数多くの生産者が存在し、高い生産性の農家が少数といういわゆる冪(べき)分布と同一の形状を示すことが確認された。これは、先行研究で明らかにされてきた製造業と同様の異質性が日本の農業にも存在することを示す。第2 に、個人経営体や組織法人経営体のグループで、生産性が顕著に高い生産者、いわゆる「スーパースター」が比較的多く存在することがわかった。これは、事例研究でこうした生産者の特徴を明らかにする必要性とともに、好事例の安易な一般化が難しいことを示している。最後に、生産性の異質性の程度を示すパレートのk と製品差別化の度合いを示す財間の代替の弾力性σ の推定により、営農類型別に異質性と製品差別化について定量的に示した。その結果、果樹作、水田作、施設野菜作ではパレートのk が大きく、生産性の低い農家が相対的に多く存在する一方で、養豚、肥育牛、養鶏のパレートのk は小さく、これらの営農類型では生産性の高い農家が相対的に多く存在していることがわかった。また、製品差別化の程度を示す財間の弾力性σは、果樹作、施設花卉作、露地野菜作、施設野菜作、水田作で大きい一方で、畜産関連の営農類型では総じて弾力性σ が小さく製品差別化の程度が大きいことがわかった。 【調査票情報と成果の関係について】 農家の生産性が多様であること(異質性)やそれをふまえた製品差別化の度合いを定量的に示すことが、生産関数の推定や分布の形状に関する分析において、個々の生産者の調査票情報を用いることによりはじめて可能になった。これまで日本農業、特に水田作を中心とした生産性分析では、都道府県ごとに集計されたデータが用いられていた。この場合、各都道府県での農家の生産性は均質であることが前提になるため、農家の多様性を捉えきれなかった。こうした先行研究の限界に対して、本研究で新たな知見を得られたのは、調査票情報を用いることができたからである。 [b]令和4年秋頃の公表を目途に、現在取りまとめている分析結果は次のとおり。 【概要】 本研究の目的は、Akune and Hosoe (2021)で得た個々の生産者の生産性向上に関連する影響を定量的に明らかにすることである。特に、農家の属性とともに近隣の農業試験場が生産性に与える影響に着目した。これは、研究員や普及員の活動は、試験場近くの農家と調査協力や営農指導等を行いやすく、このような場合、農家と農業試験場との地理的な状況で生産性への影響が異なってくるかもしれないと考えたからである。分析手法として、Akune and Hosoe (2021)で得た個別経営体のTFP に対して、各生産者の属性とともに、その生産者が立地する農業集落の活動、および同一都道府県内の最近接する農業試験場の活動に関わる影響についてパネルデータ分析を用いた。用いたデータソースは、『農業経営統計調査』の個票データ、『農林業センサス』、『国土数値情報』、『農林水産関係試験研究機関基礎調査』である。分析の結果、予算規模が大きい、あるいは、距離が近いほどTFP で見た生産性は高くなることがわかった。また、農家の年齢や経営上のコミットメントの度合いといった農家自身の属性、集落内の寄合の回数や地域の農産物市場といったその農家が属している集落の属性も、生産性に影響を与えていることがわかった。 【調査票情報と成果の関係について】 農家の生産性に対する農業試験場の影響を定量的に示すには、調査票情報によってのみ得られる農家の属性と立地に関する情報が不可欠である。生産性向上に対する農家や農業集落の属性の影響は、先行研究では事例として限られた特定の地域で分析されたり、研究者の経験則として知りえることが多かった。また、地理的な状況を加味した農業試験場との影響に関する先行研究も、報告者が知る限り見当たらない。日本全体を分析対象に、農家の多様な生産性に対する農家の属性や立地する農業集落の状況とともに、近隣の農業試験場からの影響についての本研究の知見は、調査票情報があって初めて得られたものである。 |
上記統計の作成又は統計的研究を行うに当たって利用した調査票情報に係る統計調査の名称、年次、当該調査票情報の地域の範囲その他の当該調査票情報を特定するために必要な事項 | (調査名)農業経営統計調査(営農類型別経営統計) (年次)平成16 年~平成27 年 (地域)全国 (統計的研究に利用した調査票情報)確定営農類型別区分、前年調査客体番号、2010 年センサス基本指標(都道府県、市区町村、農業集落)、農業粗収益、農業経営費、農業及び農業生産関連事業労働時間、土地面積、財産と増減形態、経営主の年齢、所得、認定農業者の有無、環境保全型区分、家族協定区分 |
上記統計の作成の方法又は統計的研究の方法を確認するために特に必要と認める事項 | 本研究では、2つの分析手法を用いた。1つは、別紙1 で示す成果[a]と[b]で用いるTFP の推定である。具体的には、各調査項目から作成した実質付加価値額、労働投入時間、実質資本ストックを用いて、生産関数を推定し、推定値から算出された全要素生産性(TFP)の分布の形状パラメータ(パレートのk)とバラエティ間の代替の弾力性σを推定した。なお、生産関数の推定では、内生性を考慮するOlley and Pakes (OP)法、Levinsohn and Petrin (LP)法、OP-ACF 法、LP-ACF 法の4 つの手法を用いた。もう1つは、成果[b]におけるパネルデータ分析であり、そのデータとして、年齢や認定農業者の有無等の農家の属性、農業集落情報とともに、生産者ごとに最近接する農業試験場の情報を結合したものを用いた。最近接する農業試験場は、2010 年センサス基本指標にもとに、生産者ごとに空間情報を付与し、最近接する農業試験場を特定した。 |
学術雑誌等の名称及び掲載年月日 |
Agricultural Economics https://doi.org/10.1111/agec.12639 2021-07-01 |