管理番号:20035020200001
府省:財務省
提供状況
2020-09-10 | 調査票情報の提供を受けた者の氏名又は名称 |
米山 正樹 三浦 稜 |
---|---|---|
調査票情報の提供を受けた者(個人に限る。)の職業、所属その他の当該者に関する事項 |
東京大学大学院経済学研究科教授 東京大学大学院経済学研究科 |
|
提供した調査票情報に係る統計調査の名称 |
法人企業統計調査 |
|
調査票情報の利用目的 | 中小企業における会計情報とリレーションシップバンキングに関する論文執筆のため。 | |
備考 |
統計若しくは統計的研究の成果又はその概要等
調査票情報の提供を受けた者の氏名又は名称 |
米山 正樹 三浦 稜 |
---|---|
提供した調査票情報に係る統計調査の名称 |
法人企業統計調査 |
統計又は統計的研究の成果等のタイトル等 | 中小企業の会計情報とリレーションシップバンキングの関係 (三浦稜の修士学位申請論文、東京大学大学院経済学研究科博士前期課程、2020年度) |
提出された統計若しくは統計的研究の成果又はその概要 |
本研究ではリレーションシップバンキングが中小企業の会計情報に与える影響を分析した。中小企業は情報公開に対し消極的であり,公開企業の場合と比べて銀行と企業の間の情報の非対称性が大きいと言われている。非対称性が存在することによって銀行は融資に対し消極的になり,その結果企業は資金不足に陥る。こうした状況を回避するために企業は自らの情報を銀行に提供することが予測される。会計情報はこうした情報の非対称性を緩和する役割を持っていると考えられる。銀行は企業の提出する会計情報を利用することによって,利子の支払いや元本の返済が可能かを判断することができる。しかし銀行は会計情報以外の情報を利用することも可能である。本研究ではそうした情報の一つとして銀行と中小企業の間のリレーションから獲得される情報に注目する。銀行はリレーションを通じて企業の経営者の能力やモチベーションに関する情報を獲得し,それを融資判断に利用することができる。リレーションを通じて獲得された情報を融資判断に利用する手法はリレーションシップバンキングと呼ばれ,国内外で中小企業への融資の際に実施されていることがわかっている。 このように会計情報とリレーションからの情報は銀行と企業の間の情報の非対称性を緩和するという役割が共通している。そこで本研究では日本の中小企業の会計情報がリレーションシップバンキングとどのような関係にあるのかを検証する。具体的にはリレーションが強く,リレーションシップバンキングが行われている状況で利益の質が低下するという仮説を設定し検証を行う。利益の質は会計発生高の大きさによってとらえ,リレーションの強さについては先行研究に従い銀行からの借入金の額を代理指標として利用する。本研究ではこの二つの間に有意な正の関係があることを予測する。サンプルは財務省の実施する法人企業統計調査の対象となっている企業であり,サンプル期間は2015年から2017年である。ただしこの調査は様々な属性を持った企業を対象としている。そのため本研究の対象として適当な企業を抽出するために中小企業庁の定める中小企業の定義を利用する。これによって13528企業-年度の観測値を得ている。 検証の結果,リレーションの強さと会計発生高の大きさの間に有意な正の相関が発見された。これはリレーションが強くなるほど銀行による会計情報の利用が低下し,その結果利益の質が低下するという本研究の仮説と整合的な結果であり,本研究の仮説は支持されたと結論づける。追加検証として,銀行からの借入を全く行なっていない企業を含むサンプルで再推計を行なっているがこちらについてはリレーションの強さと会計発生高の間には有意な関係を発見することはできていない。これは借入を行わない企業の利益の質が低く,リレーションの深化にともなう利益の質の低下の影響と相殺したためであると考えられる。 以上の結果から,先行研究に対する本研究の貢献は以下のようなものを挙げることができる。第一に,本研究は中小企業の会計情報が企業外部の主体によって影響を受けるという証拠を提供し,中小企業の会計情報を考える上でも企業外部の利用者の視点を考慮する必要があることを示した。中小企業の会計情報は主として企業内部の視点から議論される。こうした企業内部の視点は重要であるが,これに加え企業外部への情報伝達の手段という側面を考慮に入れる必要があることを本研究は示している。第二に,本研究は日本の中小企業をサンプルとして,会計情報とリレーションシップバンキングの代替関係に関する証拠を提供した。中小企業の会計情報とリレーションからの情報の関係を実証的に示した先行研究の多くがイギリスやアメリカの企業を対象にしている。本研究では,こうした国とは制度や経済環境が異なる日本をサンプルとして会計情報とリレーションシップバンキングの間に代替関係が存在することを確認した。これによって銀行が融資判断の際に会計情報とその他の情報をどのように組み合わせ利用しているかに関する新たな証拠を先行研究に付け加えた。 |
上記統計の作成又は統計的研究を行うに当たって利用した調査票情報に係る統計調査の名称、年次、当該調査票情報の地域の範囲その他の当該調査票情報を特定するために必要な事項 | (調査名) 法人企業統計調査 (年次) 平成27年度~30年 (地域) 全国 (統計的研究に利用した調査票情報) - |
上記統計の作成の方法又は統計的研究の方法を確認するために特に必要と認める事項 | 会計発生高を従属変数,銀行からの借入金の額を独立変数とする回帰式を最小二乗法によって推計した。その他の独立変数としては従業員数,資本金,レバレッジ,ROA,損失を計上しているかどうか,新規参入の困難さを表す変数を用いている。 加えて,これらの変数の記述統計量や変数間の相関係数についても論文内で議論を行っている。 |
学術雑誌等の名称及び掲載年月日 |
東京大学経済学部図書館にて所蔵、2021年9月頃より閲覧可能となる見込み。 |
成果等
成果物である論文は東京大学経済学部図書館でのみ閲覧可能となるため、オンサイト利用による以下の分析結果を掲載する。
オンサイト利用による分析結果 | 20035020200001.zip(76.1 KB) |