オンサイト利用による実践的なデータ分析の背景
世帯数、世帯規模、建て方、高齢者の有無などの地域事情を反映させた都道府県別の家庭部門の温室効果ガス排出量を推計するために、ミクロデータを活用しました。
公表されているデータでは、これらの地域事情に関する調査項目をクロス集計することが難しく、また、「家庭部門のCO2排出実態統計調査」は調査実施後間もない統計であったため、探索的な研究に活かせるのではないかと考え、オンサイト施設を利用することにしました。
オンサイト利用を通して得られた成果
オンサイト利用により、世帯規模別、建て方別、高齢者世帯員の有無別の世帯数に関する統計表とその世帯におけるCO2排出量に関する新たな統計表を作成することができました。
先行研究では、世帯内に高齢者がいるかどうかが十分に反映されていませんでした。本研究では、この統計表を用いることにより、高齢者の存在がCO2排出量に与える影響を具体的に評価することで、より実態に基づいた排出量の推計が可能となりました。
また、公的統計のみを用いた推計手法を開発したことで、地方自治体が自ら実施する施策の効果を予測・検証・活用する際に、比較的低コストで実施できるようになりました。この方法を活用することにより、自治体が策定する計画の実効性向上にも寄与することが期待されます。

戸建の場合は、世帯の人数が多いほど高齢者の有無による基礎排出係数の差が大きい
オンサイト利用による研究の可能性の拡大
実際にミクロデータを使って集計を行うことで、自分の分析に必要なデータを探りながら進めることができ、研究に必要な情報を整理することができました。加えて、実際のデータに基づいた分析結果の考察が可能となりました。
ミクロデータを元来の統計作成の目的外で研究に活用することで、調査の価値がさらに高まるものと認識しています。まずはオンサイト施設で必要なデータ・集計等を探索的に研究してみるのが良いと思います。
【活用事例】
重 浩一郎・西村 修(2020)「公的統計ミクロデータを活用した都道府県別家庭からの温室効果ガス排出量推計」土木学会論文集G(環境)
【研究キーワード】
公的統計ミクロデータ、家庭部門、高齢化社会、温室効果ガス排出量